【名古屋の夏、家を考える①】命を守る家、選べていますか?
7月に入り、名古屋の日中も30℃を超える日が増えてまいりました。新婚のご夫婦にとっては、二人で迎える夏、あるいは結婚式を控えた夏。家づくりを考え始めた方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、「なぜ名古屋の新築住宅は、夏を基準に選ぶべきなのか」というテーマで、公的データに基づいてお伝えいたします。3週連続シリーズ「名古屋の夏、家を考える」の第1回は、命の話からです。
名古屋の夏は「昔と同じ」ではありません
まず、直近の名古屋の夏がどれほど厳しかったか、事実を確認します。2025年(令和7年)の名古屋市は、8月31日に最高気温40.0℃を観測し、名古屋観測所の統計開始以来2度目の40℃超えとなりました(気象庁「過去の気象データ検索」による観測値。tenki.jp・時事通信ほか複数社が報道)。この夏の名古屋の猛暑日(最高気温35℃以上)は52日、熱帯夜(最低気温25℃以上)は73日にのぼり、いずれも観測史上最多を更新しています(ウェザーニューズ2025年9月報道・気象庁観測値)。
35年前、30年前の名古屋を知っているご両親世代の「夏は暑いけど、まあ扇風機と麦茶でなんとかなる」という記憶は、もはや現在の名古屋には当てはまりません。夏はもう「亜熱帯」に近い季節へと変質し、その変化は今後さらに進むと見込まれています。
新婚のご夫婦がこれから30年、35年住み続ける家を建てるということは、「これから何十回もやってくる、今より厳しい夏」を暮らす家を選ぶことにほかなりません。
熱中症で救急搬送される人の「約4割は自宅」で発生している
もう一つ、驚くべき数字をご覧ください。総務省消防庁が2025年10月29日に公表した「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」によれば、5月から9月までの全国の熱中症救急搬送人員は100,510人(調査を開始した平成20年以降で最多)、うち死亡が117人にのぼりました(出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」)。
そして注目すべきは発生場所の内訳です。
| 発生場所 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 住居 | 38,292人 | 38.1% |
| 道路 | 19,773人 | 19.7% |
| 公衆(屋外) | 12,175人 | 12.1% |
| 仕事場(工場・作業所等) | 10,559人 | 10.5% |
| その他 | 19,711人 | 19.6% |
(出典:総務省消防庁 令和7年報告書)
熱中症救急搬送のうち、屋外や仕事場ではなく「住居」での発生が最多の38.1%。愛知県だけでも令和7年5〜9月に6,653人が救急搬送されており(同報告書都道府県別表)、その大半は名古屋市を含む都市部からの搬送です。年齢区分別では高齢者が57.1%を占めています。
家の中は「涼しくて安全な場所」であるはずが、現代の日本の住宅は、外より危険になり得る場所へと変わりつつあるのです。
「暑い家」と「涼しい家」の差は、設計で決まる
同じ気温35℃の日でも、室内で快適に過ごせる家と、エアコンをかけても2階の寝室が30℃を下回らない家があります。この違いはどこから来るのでしょうか。
国土交通省の「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」によれば、住宅の断熱性能は「UA値(外皮平均熱貫流率)」という指標で表され、地域区分ごとに等級が定められています。名古屋市は「地域区分6」に該当し、各等級のUA値の基準は次の通りです(出典:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」)。
| 断熱等性能等級 | UA値の基準 (地域区分6・名古屋) |
通称 |
|---|---|---|
| 等級4(旧・最高等級) | 0.87 | 平成28年省エネ基準 |
| 等級5 | 0.60 | ZEH水準 |
| 等級6 | 0.46 | HEAT20 G2相当 |
| 等級7 | 0.26 | HEAT20 G3相当 |
※UA値は小さいほど断熱性能が高い
2022年10月に断熱等級6・7が新設されたことで、名古屋のような温暖地でも「高断熱の家」の目安が明確になりました。国交省の設計ガイドによれば、等級6・7の住宅では「家全体を少ないエネルギーで暖冷房することが可能」であり、廊下や脱衣所・寝室まで室温を保ちやすくなります。
熱中症は、リビングでエアコンをつけていても、就寝中の寝室や、朝の脱衣所、日中の2階で発生しやすい病気です。「LDKだけ涼しい家」ではなく、「家全体が涼しい家」を選べるかどうか。それを決めるのは、間取りや設備の選び方ではなく、建てるときに選ぶ断熱等級なのです。
「子どもができてから」では、間に合わないもの
前回のコラム(「ジューンブライドの季節に考える。『結婚式』の次に『家づくり』を始めるべき3つの理由」)でも触れましたが、名古屋の新婚夫婦にとって「家を建てるタイミング」は、資金計画・補助金・住宅ローンだけの問題ではありません。
夏の熱中症のリスクは、乳幼児と高齢者で最も高くなります。前述の消防庁データでも、救急搬送された高齢者は57,433人(全体の57.1%)にのぼりました。
これから子どもを迎え、いずれは親御さんの介護や同居の可能性も視野に入る新婚のご夫婦だからこそ、家を建てる最初の一回で選んだ「断熱等級」という骨格の選択が、その後30年の暮らしの安全を左右します。後から追加できる家具や家電と違って、家の断熱性能は建てた瞬間にほぼ確定する性能だからです。
エアコンを買い替えることはできますが、家の外皮を後から等級7に上げることは、現実的には不可能に近い工事となります。だから、「暑くなってから対策する」のではなく、「暑くなる前提で設計する」――これが2020年代後半の名古屋で家を建てる、新しい常識です。
NKT HOMEが名古屋の夏に向き合うということ
NKT HOMEは、名古屋市南区に本社を置く工務店として35年間、名古屋の気候風土のなかで家づくりを続けてまいりました。夏の高温多湿と、冬の伊吹おろしによる底冷え。この二極を同じ建物で快適に乗り切るために、私たちは断熱・気密・日射コントロールを一体で設計しています。
高断熱の家は、単に「涼しい」だけではありません。冷房の効率が上がるため電気代が下がり、家じゅうの温度差が減ることで、将来のヒートショックリスクも下がります。新婚のうちに家全体の性能を上げておくことは、これから生まれる子どもと、いずれ迎え入れる可能性のあるご両親、そしてご夫婦自身の30年後の健康への、最も確実な投資なのです。
次回予告:梅雨明けの7月19日、電気代の話
シリーズ「名古屋の夏、家を考える」、次回は7月19日(東海地方の梅雨明け平年日)にお届けします。テーマは「お金の話」。経済産業省が発表した令和8年7〜9月の電気・ガス料金支援と、それでもなお夏の電気代がなぜ跳ね上がるのか、そして「支援を受けなくてもいい家」を建てるという発想について、公的データをもとに解説いたします。
名古屋で新婚のうちに家を建てるという選択が、経済的にも合理的である理由。ぜひ来週もお読みください。
参考資料・出典
総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(令和7年10月29日公表)
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf
気象庁「過去の気象データ検索(名古屋)」
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php?prec_no=51&block_no=47636
国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」
https://www.mlit.go.jp/common/001585664.pdf
国土交通省「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001884522.pdf
環境省 熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/
※本コラムは2026年7月時点の公表情報に基づき作成しています。名古屋の観測気温は気象庁の観測データに基づく報道値を引用しています。
