男性は「間取り」、女性は「立地」。国の調査が証明した夫婦のすれ違いと、その解消法
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はじめに ― 家づくりは「夫婦の価値観」がぶつかる場所
「キッチンにこだわりたい妻と、書斎がほしい夫」
「駅近を優先したい夫と、庭のある郊外を望む妻」
「予算をしっかり抑えたい一方で、せっかくだから妥協したくない一方」
家づくりの打ち合わせは、夫婦の価値観の違いが一気に表面化する場です。「まさかこんなことで揉めるとは思わなかった」という声は、NKT HOMEの相談会でも珍しくありません。
しかし、ここで大切なことをお伝えしたいと思います。夫婦で意見が食い違うこと自体は、決して問題ではありません。むしろ、それぞれの視点や優先事項がはっきりと見えてくることは、より良い家づくりへの第一歩でもあります。
重要なのは、その「ずれ」を感情的な対立で終わらせず、建物の設計に落とし込んでいくプロセスです。今回は、なぜ夫婦が家づくりで揉めやすいのかを構造的に整理したうえで、その価値観の違いを「設計」という形で昇華させるための考え方をご紹介します。
データで見る「夫婦のすれ違い」の根っこ
住宅に対して男女がそれぞれ何を重視するのかについて、内閣府が実施した「住生活に関する世論調査」(平成27年)では興味深い男女差が確認されています。住宅および住宅の立地・周辺環境に関して最も重視するものを聞いたところ、「住宅の広さ・間取り」を重視する割合は男性で高く、「立地の利便性」を重視する割合は女性で高いという結果が出ています。
出典:内閣府「住生活に関する世論調査」平成27年10月調査
また、国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によれば、注文住宅を取得した世帯が住宅選択にあたり妥協した点として「価格・家賃(予定より高かった)」がすべての住宅種別で最も多いことが示されています。多くのご夫婦が「こだわりたい気持ち」と「予算の現実」の間で葛藤し、何かを諦める判断を迫られているのが実態です。
出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」令和6年7月公表
この2つのデータが示すことは明快です。家づくりにおける夫婦のすれ違いは「性格の不一致」ではなく、それぞれが異なるものを重視して生活してきたという、ごく自然な価値観の違いから生まれているのです。そして、その違いに「予算」という現実的な制約が加わることで、対立が生まれやすくなります。
揉めやすい「3つの典型パターン」
長年の経験から、夫婦の意見が食い違いやすいテーマには、いくつかの典型的なパターンがあります。
パターン①「立地」vs「広さ・環境」
一方が「通勤時間を短くしたいから駅に近い場所がいい」と主張し、もう一方が「子どものために緑が多い環境や広い庭がほしい」と望む。このパターンは非常によくあります。
駅近は利便性が高い反面、土地代が上がり、敷地面積が狭くなりやすい。郊外・緑の多い環境は広さや自然が手に入る反面、通勤・通学の負担が増す。どちらも正当な希望であり、どちらが正しいという話ではありません。ただ、この議論が「お互いの主張を言い合うだけ」で終わると、打ち合わせが前に進まなくなります。
パターン②「性能・機能」vs「デザイン・見た目」
「高断熱・高気密にこだわりたい」「耐震性能は最高等級にすべきだ」と性能を重視する一方で、「外観のデザインや内装の雰囲気も大事」「こだわりのキッチンに憧れている」とデザインや設備に価値を置くケース。どちらにお金をかけるかで、意見が合わなくなります。
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によると、注文住宅取得世帯が設備等について住宅を選んだ理由として「高気密・高断熱住宅だから」が62.9%で最も多いという結果が出ています。一方で同調査では「間取り・デザインが気に入ったから」も上位に入っており、性能とデザインの両立を多くの世帯が求めていることがわかります。
出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」令和6年7月公表
パターン③「今の生活」vs「将来への備え」
「子どもの部屋は今すぐ必要」「広いリビングで今の暮らしを豊かにしたい」と現在の生活を重視する視点と、「将来の介護を考えてバリアフリーにしておきたい」「老後の資金も考えて予算を抑えるべき」と長期的な視点を優先する考え方のすれ違いです。
どちらも間違ってはいません。ただ、時間軸が違うため、同じテーブルで話し合おうとしても噛み合わない場合があります。
価値観の違いを「設計」に変える3つのステップ
では、こうした対立をどう乗り越えればよいのでしょうか。NKT HOMEがご提案している、夫婦の意見を整理して設計に落とし込むためのアプローチを3つご紹介します。
「要望」の前に「理由」を話し合う
「書斎がほしい」という要望の裏には、「集中して仕事できる空間がほしい」という理由があります。「広いキッチンがほしい」の裏には、「家族が一緒に料理できる場所を作りたい」という理由があります。
要望(What)ではなく、その理由・目的(Why)を先に共有することで、思わぬ共通点が見つかることがあります。たとえば「書斎がほしい夫」と「キッチンを広くしたい妻」の対立に見えても、「家族それぞれが自分の居場所を持てる家にしたい」という点では一致していたりします。「なぜそれが必要なのか」を言語化することが、すれ違いを解消する最初の一歩です。
「優先度」を3段階で見える化する
ご夫婦それぞれが「絶対に譲れないもの」「できればほしいもの」「なくてもいいもの」を書き出し、比べてみましょう。
| 優先度 | 夫の例 | 妻の例 |
|---|---|---|
| 絶対に譲れない | 書斎・耐震性能 | キッチンの広さ |
| できればほしい | ガレージ | 庭 |
| なくてもいい | ― | 書斎 |
家づくりは「全てを手に入れること」ではなく、「お互いの"絶対"を守りながら全体を最適化すること」です。お互いの「絶対」が重なる部分と、交渉の余地がある部分を可視化するだけで、議論の質が大きく変わります。
「プロ」に第三者として入ってもらう
夫婦2人だけで話し合うと、感情的になりやすいのは自然なことです。第三者であるプロ(設計士・工務店の担当者)に間に入ってもらうことで、議論が客観的な視点で整理されます。
信頼できるプロは、「どちらの要望も正しい」という前提に立ちながら、予算・法規・構造上の制約を踏まえた現実的な選択肢を提案してくれます。「それは技術的に両立できます」「この点は優先順位をつけてもらう必要があります」という専門家の言葉は、夫婦の感情的な対立を冷静な判断へと導く力があります。
NKT HOMEの相談会で起きる「変化」
NKT HOMEの家づくり相談会では、「夫婦で意見が合わない」というご夫婦が来てくださることも多くあります。
そうした場合、担当者がまずお二人それぞれに「一番大切にしたいこと」を個別にヒアリングします。向かい合って話すのではなく、それぞれの思いを別々に整理してから共有するというプロセスを踏むことで、「相手がそんなことを大事にしていたのか」という気づきが生まれます。
名古屋市南区を拠点に35年、地域のご家族の家づくりに携わってきたNKT HOMEは、設計の技術だけでなく、こうした「家族の対話」のサポートも大切なお手伝いだと考えています。ご夫婦の意見が今どんな状態であっても、どうぞお気軽にご相談ください。
■ 参考資料・出典
- 内閣府「住生活に関する世論調査」(平成27年10月調査)
https://survey.gov-online.go.jp/h27/h27-juuseikatsu/2-1.html - 国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」(令和6年7月公表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000196.html
