【前編】電気代1.6倍時代の家づくり ― 名古屋のご夫婦が知っておきたい「ランニングコストで選ぶ家」という新常識
毎月届く電気・ガスの明細を見て、「なんだか前より高くなった気がする...」と感じていらっしゃるご夫婦は、きっと多いのではないでしょうか。
その感覚、実は気のせいではありません。
資源エネルギー庁が公表している「日本のエネルギー 2025年度版」(2026年4月最終更新)によると、家庭用の電気料金平均単価は、2010年度の20.4円/kWhから2024年度には33.1円/kWhへと、14年間で約1.6倍に跳ね上がっているのです(出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2025年度版」3.経済性)。
| 年度 | 家庭用電気料金平均単価 |
|---|---|
| 2010年度 | 20.4円/kWh |
| 2014年度 | 27.0円/kWh |
| 2022年度 | 31.2円/kWh |
| 2023年度 | 29.8円/kWh |
| 2024年度 | 33.1円/kWh(約1.6倍) |
これから新築をご検討されているご夫婦にとって、これからの30年・40年という長い住まいの時間軸を思い浮かべたとき、「建てるときにかかるお金」だけでなく、「住んでから払い続けるお金」=ランニングコストをどう抑えるかが、家計を大きく左右する時代になってきました。
このコラムでは前後編にわたって、名古屋でこれから家を建てるご夫婦に、ぜひ知っておいていただきたい「ランニングコストで選ぶ家」という新しい視点を、最新の公的データに基づいてお届けしていきます。
1. 名古屋のご家庭は、年間いくら光熱費を払っているの?
まずは現実から見ていきましょう。
環境省が公表する「家庭部門のCO2排出実態統計調査(令和5年度確報値)」によると、1世帯が1年間に支払うエネルギー費用の全国平均は次のようになっています(出典:環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査)。
| 種別 | 年間消費量 | 年間支払金額 |
|---|---|---|
| 電気 | 3,911 kWh | 11.1万円 |
| 都市ガス | 177 ㎥ | 3.0万円 |
| LPガス | 23 ㎥ | 2.0万円 |
| 灯油 | 119 L | 1.3万円 |
| 合計 | ― | 17.4万円 |
ここでぜひ注目していただきたいのが、名古屋を含む東海地方の電気消費量は年間3,956kWhと全国平均よりやや多く、エネルギー消費に占める電気の比率は52.8%にのぼるという事実です。
つまり、名古屋エリアは「電気依存度がやや高い」地域。電気料金の値上がりの影響を、他の地域よりも直接的に受けやすい地域だといえるのです。
もし今後も電気料金の上昇が続いたら、どうなるでしょうか。今は年間17.4万円の光熱費が、5年後には20万円、25万円と膨らんでいく可能性は十分にあります。
30年というスパンで考えてみると、わずか年5万円の差でも、累計で150万円。年10万円の差なら、なんと300万円もの金額が、住宅ローンとはまったく別に家計から出ていく計算になります。
これ、けっこう怖い話ですよね。
2. そもそも、家庭のエネルギーは「何に」使われているの?
「ランニングコストを抑える家」を考えるには、まず「家のどこでエネルギーを使っているのか」を正しく知ることがスタート地点です。
資源エネルギー庁『エネルギー白書2024』に載っている、家庭部門の用途別エネルギー消費構成比(2022年度)を見てみましょう(出典:資源エネルギー庁 エネルギー白書2024)。
- 動力・照明他(家電製品など):33.4%
- 給湯:28.4%
- 暖房:25.3%
- 厨房:10.3%
- 冷房:2.6%
このデータから、見落とされがちな2つの大切な事実が浮かび上がってきます。
ひとつ目:暖房・給湯・冷房で全体の半分以上
「暖房25.3%+給湯28.4%+冷房2.6%」で全体の半分以上を占めています。言い換えれば、家の断熱性能や給湯設備をきちんと選べば、家庭エネルギーの半分以上に手を打てるということなのです。
ふたつ目:暖房は冷房の10倍近いインパクト
冷房はわずか2.6%なのに対して、暖房は25.3%と、実に10倍近い差があります。名古屋といえば「夏の蒸し暑さ」のイメージが強いですが、家計へのインパクトは「冬の暖房」の方が圧倒的に大きい。これは多くのご家庭が見落としがちな、けれどとても重要なポイントです。
3. 「補助金頼みの電気代」、その実情はこうなっています
「ここ数年、電気代の上昇は思ったほど急ではないかも?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。それは、政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」によって、料金が値引きされてきたからなんです。
ただし、この支援、すでに転機を迎えています。
資源エネルギー庁の公式情報によると、直近の支援はこんな経緯をたどってきました(出典:資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援)。
- 2026年1月・2月使用分:低圧4.5円/kWh、高圧2.3円/kWhの値引き
- 2026年3月使用分:縮小値引き(低圧1.5円/kWh)を最後に、冬期支援は予定通り終了
- 2026年4月使用分以降:支援なし、本来の料金が家計に戻ってきています
つまり、ちょうどこのコラムを書いている2026年5月時点で、すでに「補助金で守られていた電気代」から、「本来の料金がそのまま請求される時代」へ切り替わっているわけです。
なお、夏に向けて(2026年7〜9月使用分)、政府は支援の再開を検討していることが各種報道で伝えられていますが、本コラム執筆時点(2026年5月)では、まだ正式な決定には至っていません。
いずれにせよ、補助金が「あるときは下がる、無いときは上がる」という不安定な状況は、これからもしばらく続きそうです。
しかも追い打ちをかけるように、再生可能エネルギーの普及を支える「再エネ賦課金」も、経済産業省が2026年3月19日に発表した最新告示で、2026年5月検針分から1kWhあたり4.18円(前年度3.98円から+0.20円)へ引き上げられることが決まっています(出典:経済産業省 報道発表)。
これから新居に入居されるご夫婦にとって、ここから先は「政府の補助に頼らず、自分の家の性能でランニングコストを下げる」という発想が、ますます大切になってきます。
4. 断熱性能で、光熱費はこんなにも変わります ― 国土交通省の公式試算より
「家の性能で、そんなに光熱費が変わるの?」と思われるかもしれません。
その答えは、国土交通省自身が公表している正式な試算データを見ると、はっきりわかります。
国交省が公表している「省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例について(住宅)」によれば、120㎡の戸建住宅で、断熱性能が低い住宅から省エネ基準レベルへ性能を引き上げた場合のランニングコスト差は、次のように示されています(出典:国土交通省 公式試算資料)。
| 元の断熱仕様 | 改修後 | 年間光熱費の差額 |
|---|---|---|
| UA値1.00(断熱性が低い) | UA値0.85 | 約7,432円/年 |
| UA値1.20(断熱性がかなり低い) | UA値0.85 | 約14,428円/年 |
| UA値1.38・単板ガラス(ほぼ無断熱) | UA値0.85 | 約18,676円/年 |
これは「省エネ基準ぎりぎり」のレベルの話。ZEH水準(断熱等級5)や、さらに上のHEAT20 G2・G3水準(断熱等級6・7)の住宅になれば、削減効果はもっと大きくなります。
しかもこの試算、実は2018年時点の電気料金単価で計算されたもの。冒頭でお伝えしたとおり、電気料金は2010年度比で1.6倍に上昇していますから、現在の単価で計算し直せば、断熱性能による光熱費削減額はさらに大きくなっているはずなのです。
5. 物件選びのときは「目安光熱費」を必ずチェック
2024年4月から、国土交通省が運用する「住宅省エネ性能表示制度」によって、新築住宅の販売・賃貸広告に「目安光熱費」を表示できるようになりました(出典:国土交通省 目安光熱費)。
これは、その家の省エネ性能をもとに電気・ガスなどの年間消費量を算出し、全国統一の燃料単価(電気27円/kWh、都市ガス156円/㎥、LPガス706円/㎥、灯油88円/L)を掛け合わせて、「この家に住むと年間いくらの光熱費がかかるのか」の目安を客観的に示してくれる便利な仕組みです。
国交省のパンフレットに載っている試算例では、目安光熱費は「年12万円」から「年33万円」まで、住宅性能によって最大2倍以上の開きが出ています。30年で計算すれば約630万円、35年なら約735万円の差です。これは、軽自動車を数台買えてしまうほどの金額...。
これからの家選びでは、価格や間取りと並んで、「目安光熱費が何万円か」を必ずチェックすることを、強くおすすめしたいと思います。
後編へ ― 「攻め」のランニングコスト戦略、いよいよ本題へ
ここまでの前編では、電気代1.6倍時代の現実と、2026年4月から補助金がいったん途切れて電気代が「本来の料金」に戻ってきていること、そして住宅の断熱性能ひとつで30年スパンの家計に大きな差が生まれる、という事実をお伝えしてきました。
ただ、ここまではいわば「守りの対策」の話。光熱費の上昇に対して、しっかり備える家をつくる、というお話でした。
来週公開の後編では、いよいよ「攻めのランニングコスト戦略」に踏み込みます。
- 太陽光発電は2026年から「売る時代」から「自家消費の時代」へ ― 制度の大転換とは?
- 蓄電池・V2H(EVを家の電源にする仕組み)の費用対効果
- 2026年に使える、国と名古屋市の補助金。モデルケースで合計いくら戻ってくる?
- そして、NKT HOMEの A-STYLE/H-STYLE/I-STYLE が、なぜ「30年後に笑える家」になるのか
電気代1.6倍時代を、家計の不安ではなく、家づくりのチャンスに変える具体策を、来週もぜひお楽しみに。
「うちの場合はどんな選択がベストだろう?」と気になり始めた方は、ぜひ後編を楽しみにお待ちください。きっと、家づくりの見方が変わるはずです。
【本コラム前編の主な出典】
- 資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2025年度版』(2026年4月最終更新)
- 資源エネルギー庁『エネルギー白書2024』
- 資源エネルギー庁『電気・ガス料金支援』公式サイト
- 環境省『令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)』
- 経済産業省『2026年度再エネ賦課金単価について(2026年3月19日発表)』
- 国土交通省『省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例について(住宅)』
- 国土交通省『住宅省エネ性能表示制度/目安光熱費』
