「いつか」を「そろそろ」に変えた春の話 ~ゴールデンウィーク前後が、家づくりの始めどきな理由~
※これは実際の住宅関連情報に基づいて創作された物語です。
※本文中の制度・日付・数値は、2026年4月末時点で公表されている公的情報に基づいています。
そのひと言は、連休の少し前に生まれる
四月の終わりの金曜日。名古屋市内の賃貸アパートで暮らす亮太さん、彩さん、そして5歳の娘・結菜ちゃんは、いつものように少し遅めの夕食を囲んでいました。
亮太さんは35歳。通勤は電車で片道40分ほど。彩さんは33歳。時短勤務で働きながら、保育園の送り迎えと家事をこなしています。結菜ちゃんはこの春、年長さんになりました。最近は食後にクレヨンを広げて、「わたしのおうち」を描くのがブームです。リビングの壁には、大きな窓のある家、庭のある家、そして「ママのおしごとへや」と書かれた家の絵が増えていました。
「保育園のあと、小学校のことも少し考えないとね」
彩さんがそう言うと、亮太さんがみそ汁の湯気の向こうでうなずきました。
「うん。......そろそろ家のこと、考える?」
そのひと言で、部屋の空気が少し変わりました。今まで何度か話題にはなっていたけれど、仕事が忙しかったり、結菜ちゃんが小さかったりで、いつも"いつか"のまま流れていた話です。でも今年は違いました。5歳になった娘の成長と、新年度の慌ただしさが少し落ち着いたこの時期が、ふたりの背中をそっと押していたのです。
2026年のゴールデンウィークは、4月29日が昭和の日、5月3日が憲法記念日、5月4日がみどりの日、5月5日がこどもの日、5月6日が休日です。まとまった休みが見えてくるこの時期は、家族で将来を話し合う時間を取りやすい節目でもあります。[内閣府] [祝日CSV]
その夜、結菜ちゃんが眠ったあと、ふたりはテーブルにノートを一冊置きました。「家を建てるかどうか」ではなく、まずは「どんな暮らしがしたいか」から書いてみよう。それが、亮太さんと彩さんの家づくりの最初の一歩でした。
土地より先に見えたのは、ふたりの"暮らしの希望"だった
ノートの一ページ目に、彩さんはこう書きました。
・洗濯がラクな家
・結菜が小学生になっても落ち着いて過ごせる家
・在宅で少し仕事ができる場所
・冬寒すぎず、夏暑すぎない家
亮太さんは少し考えてから、こう書き足しました。
・通勤しやすい場所
・住宅ローンが重すぎないこと
・休日に家族でゆっくりできること
・地震や水害が心配すぎない場所
最初は「名古屋市内? 郊外?」「駅徒歩何分?」といった話から始めるつもりでした。けれど、話しているうちに、ふたりにとって大事なのは"条件"よりも"毎日の過ごし方"なのだと見えてきました。
朝、洗面所が混み合わないこと。雨の日でも洗濯物に困らないこと。結菜ちゃんが帰宅して「ただいま」と言ったとき、ランドセルや上着を置く場所に迷わないこと。休日の午後、ソファで並んで座れること。家づくりは、立派な間取り図から始まるのではなく、こうした細かな生活の願いから輪郭が見えてきます。
この段階で、まだ土地も会社も決まっていなくて構いません。むしろこの時期に必要なのは、「どんな家が欲しいか」より、「どんな毎日を送りたいか」を言葉にすることです。夫婦でそこが共有できると、見学や相談に行ったときに、情報に振り回されにくくなります。
亮太さんはスマートフォンで、住宅を取り巻く情報も少し見てみました。国土交通省は住宅着工統計を継続的に公表しており、2026年2月の新設住宅着工は全体で前年同月比4.9%減と発表しています。住宅を取り巻く状況は、思っている以上に月ごとに動いています。「もっと落ち着いてから考えよう」と先延ばしにするより、時間が取れるときに自分たちの軸をつくっておくことが大切だと感じました。[国土交通省]
「展示場を何軒回るかより、まずはうちがどんな暮らしをしたいかだね」
亮太さんがそう言うと、彩さんが笑ってうなずきました。連休は、どこかへ"出かける"だけでなく、これからの暮らしに"向き合う"時間にもなる。ふたりはそんなふうに思い始めていました。
"いくら借りられるか"より、"いくらなら安心か"を考えた夜
家づくりの話が一歩進むと、次に必ず出てくるのがお金のことです。実際、亮太さんも彩さんも、ここがいちばん不安でした。
「家って、いくらくらいなんだろう」
「住宅ローンって、結局どれを選べばいいの?」
「子どもの教育費もあるし、無理はしたくないよね」
住宅ローンには、代表的なものとして変動金利型と全期間固定金利型があります。住宅金融支援機構によると、変動金利型は金利変動の影響を借り手が負うため一般に金利が低めで、全期間固定金利型はそのリスクを金融機関側が負うため一般に高めに設定されます。つまり、今の金利の低さだけで決めるのではなく、将来の返済額の変化も含めて考える必要があるということです。[住宅金融支援機構]
さらに住宅金融支援機構の調査ページでは、「利用した金利タイプ」「今後の金利見通し」「金利変動リスクに対する意識」などが調査項目として示されています。公的機関が継続してこうした項目を調べていること自体、住宅ローン選びが暮らしに直結する重要なテーマであることを物語っています。[住宅ローン利用者調査]
彩さんはノートに「月々の返済」と書き、横に家計の固定費を書き出しました。家賃、保育料、車、保険、食費、通信費。亮太さんは「借りられる額」ではなく、「この先10年、15年たっても無理なく払える額」を考えようと提案しました。
そして、もうひとつ大きかったのが補助制度です。2026年春に公表されている子育てグリーン住宅支援事業では、新築住宅について、床面積50㎡以上240㎡以下を対象に、GX志向型住宅は160万円/戸、長期優良住宅は80万円/戸、ZEH水準住宅は40万円/戸の補助額が示されています。長期優良住宅は、古家の除却を伴う場合に20万円の加算があります。また、長期優良住宅とZEH水準住宅は、賃貸を除き、子育て世帯または若者夫婦世帯が対象です。[子育てグリーン住宅支援事業]
結菜ちゃんは5歳。亮太さんと彩さんは30代夫婦。つまり、自分たちの家づくりも、条件によってはこうした制度の対象になりうるのだと分かりました。
「補助金があるから建てる、じゃないけど......」
彩さんが言います。
「でも、"どんな家を目指すか"と"どうお金を組み立てるか"を、最初から一緒に考えられるのは大きいね」
その夜、ふたりは初めて、「家を建てるのはまだ先の夢」ではなく、「きちんと計画すれば現実になるかもしれない」と思えました。
気に入った土地ほど、ハザードマップを見ることにした
ゴールデンウィークの初日。ふたりは結菜ちゃんを連れて、気になっていたエリアを車で回りました。
「このあたり、静かでいいね」
「公園もあるし、スーパーも近そう」
「小学校までの道も悪くないかも」
そんなふうに話しながら街を歩く時間は、楽しいものです。でも今回は、ただ"いい感じ"で終わらせないと決めていました。
帰宅後、亮太さんは名古屋市の公式ハザードマップを開きました。名古屋市では、洪水、内水氾濫、高潮、地震、津波、ため池氾濫などの災害リスクを確認できます。土地選びでは、駅からの距離や価格だけでなく、「その場所で長く安心して暮らせるか」を確かめることも欠かせません。[名古屋市ハザードマップ]
さらに名古屋市は、防災アプリを通じて、特定地点の災害リスクや避難場所などを確認できることも案内しています。候補地を見に行ったあとに、公式情報で防災面をチェックする。この流れを最初から当たり前にしておくと、土地選びの見え方は大きく変わります。[名古屋市防災アプリ案内]
実際に、昼間に見て「ここ、いいね」と話していた土地のひとつは、地図で別の見え方をしました。逆に、見た目だけでは地味だった場所が、「通学路」「災害リスク」「生活利便性」を合わせて見ると、安心感のある候補に変わった場所もありました。
「いい土地って、"素敵に見える土地"だけじゃないんだね」
彩さんがそうつぶやくと、亮太さんもうなずきました。
「うん。"ちゃんと納得して選べる土地"が、いい土地なんだと思う」
家づくりにおける安心とは、何も起きないことではなく、起こりうることを知ったうえで選ぶこと。これは、これから家を建てる人にとって、とても大きな視点です。
連休の終わりに、家づくりは"相談できる形"になっていた
5月6日の夜。連休の最後に、ふたりは最初のノートをもう一度開きました。
一ページ目には、あの日書いた「どんな暮らしがしたいか」。次のページには、「月々の返済はこのくらいまで」「この補助制度は確認したい」「このエリアは候補」「この場所は防災面をもう少し見る」といったメモが増えていました。
まだ何も決まっていません。土地も、間取りも、住宅会社も、ローンの商品も。それでも連休前とは、はっきり違うことがありました。
それは、家づくりが"ぼんやりした憧れ"から"相談できる計画"に変わっていたことです。
亮太さんは言いました。
「何から始めればいいか分からなかったけど、今は聞きたいことが見えてきたね」
彩さんも言います。
「うん。展示場に行くとしても、"なんとなく"じゃなくて、自分たちの希望を持って行けそう」
家づくりは、連休中に結論を出すものではありません。でも、ゴールデンウィーク前後に、
・どんな暮らしをしたいか
・いくらなら安心して考えられるか
・どの地域で暮らしたいか
・どんな公的制度や防災情報を確認すべきか
このあたりが見えてくるだけで、その後の進み方は大きく変わります。
結菜ちゃんは、その夜も新しい家の絵を描いていました。前より少し具体的に、玄関の横には「てあらい」、二階には「ほんをよむへや」、庭には小さな木が一本。
「ここ、パパとママのいすね」
そう言いながら描いたソファの絵を見て、亮太さんと彩さんは顔を見合わせました。
家づくりは、特別な人だけのものではありません。忙しい毎日を送る30代の夫婦が、子どもの成長をきっかけに、少しずつ考え始めるものです。そしてその最初の一歩には、四月の終わりから五月のはじめにかけての、少しだけ時間に余白のある季節がよく似合います。今年のゴールデンウィーク前後は、家を"決める"日でなくていい。けれど、家づくりを"始める"日には、きっとできます。
